わたしの本棚。石田千さんの大ファンです。
千さんは小説も書かれますが、エッセイのほうがよく知られているのかなと思います。
おいしい食べものが出てくるエッセイは、読んでいるだけで幸せな気持ちになります。お肉屋さんのコロッケ、ひとり暮らしのレシピ、お酒を飲みに出かけたり、ベランダでミントを育てたり。千さんの日常や人となりを感じられるようなエピソードがたくさん。
たとえば、マスタードの小瓶。たいていのスーパーに売っている、黒いふたの、尻すぼみのあの瓶を想像してください。
『おきにいり』
なかみの最後のひとさじぶんを入れたまま、お酢と玉ねぎのみじん切りと油をいれて、しゃかしゃか振る。ひとびんが、2、3回ぶんのドレッシングになって、1日ふつかで使いきれる。飽きない、傷まないうちに食べきれる。
石田千 『箸もてば』 新講社 2017年 (「おきにいり」より)
マスタードの小瓶、わたしはやっと9つ集まりました。保存用にお料理用にと大活躍。コロンと愛らしいフォルムも、蓋のしまり具合も、すべてがちょうどいい。25年選手の千さんには、まだまだおよびませんが。
ひとりぐらしの千さんは、ひとりぶんの食事をつくるのも上手です。
ポテトサラダは、じゃがいもひとつぶん。そんなつつましさにあこがれて、わたしもマスタードの小瓶を集めています。
『夏のおさけ』
夏がくるたびに飲みたくなる、いいかげんなカクテル。わたしはこれがつくりたくて、ベランダでミントを育てています。
ミントの葉と黒糖を、すり鉢でがしがしつぶす。
おおきなコップにうつして、氷とラム酒、炭酸水をそそぐ。最後にレモンをぎゅっとしぼり、がらがらかきまぜる。
モヒートであるような、レモンサワーであるような、そういういいかげんなカクテルを、夏じゅうのんでいる。
石田千 『窓辺のこと』 港の人 2019年 (「夏のおさけ」より)
千さんが以前住んでいたアパートには、屋上がありました。ミントをそだてたり、洗濯物を干したり、ご近所さんのつくっているゴーヤをおすそわけしてもらったり。
なんだか懐かしいアパート。ひとつ屋根の下で、人と人がゆるくつながり合う暮らしにあこがれます。
わたしが一番すきな「お肉屋さんのコロッケ」のエピソードを紹介したくて、朝から本棚をずっとさがしていたのですが、なぜか見つけられませんでした……。
梅雨。せっかくなのでお家でのんびり雨音を聞きながら、千さんの作品をぜんぶ読み返したいと思います。
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